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企業のバックアップとは|国内クラウド・多要素認証・別系統保存で守る5層対策

バックアップは「保存」ではなく「復旧できる仕組み」

国内クラウドを中心に企業データを守る5つの対策

企業が保有するデータは、パソコンやサーバーに保存されている単なるファイルではありません。

顧客情報、契約書、請求書、従業員情報、業務記録、写真、設計資料などには、企業がこれまで積み重ねてきた業務と信用が記録されています。

パソコンやNASは、故障しても買い直せます。しかし、失われたデータを同じ状態で買い戻すことはできません。

そのため、企業のバックアップでは、単にデータを別の場所へコピーするだけでなく、次の状態まで整える必要があります。

  • 機器が故障してもデータが残る
  • 誤削除や上書きから復元できる
  • ランサムウェアの被害を限定できる
  • 不正なアカウント利用を防止できる
  • 必要のない従業員には情報を見せない
  • クラウドサービスに障害があっても別のコピーが残る
  • 実際にデータを復元して業務を再開できる

バックアップの目的は、ファイルを保存することではありません。

事故が起きた後に、必要なデータを取り戻し、事業を継続できる状態をつくることが目的です。

本記事では、NTT東日本のコワークストレージを業務データの中心に据え、企業データを守るための5つの対策を解説します。


企業データを守る5層の構成

TrusKite(トラスカイト)では、次の構成を企業向けデータ保全の基本形として考えています。

  1. コワークストレージによる国内クラウド保管
  2. パソコンなどの端末セキュリティ
  3. 多要素認証とアカウント管理
  4. コワークストレージとは別系統のバックアップ
  5. 定期的な復元テスト

これらは、同じ対策を重複して導入するものではありません。

それぞれが、異なる事故や攻撃に備える役割を持ちます。


第1層:コワークストレージで業務データを集中管理する

企業内のデータが、各従業員のデスクトップ、USBメモリー、個人用クラウド、メールの添付ファイルなどに分散していると、企業として適切に管理できません。

どこに最新版があるのか分からない、退職者のパソコンにしか残っていない、必要なファイルを誤って削除した、個人アカウントで社外へ共有していたといった問題が起こります。

コワークストレージを業務データの中心にすることで、企業が管理する領域へデータを集約できます。

NTT東日本は、コワークストレージのサーバー群を日本国内に設置し、利用者のデータを国内の地理的に離れた複数のデータセンターへ冗長化して保管すると案内しています。

事業所内のパソコンやNASだけに保存する場合と比較すると、火災、水害、盗難、機器全体の故障などによって、同じ場所にあるデータが同時に失われるリスクを抑えられます。

国内保管の意味

国内保管の主な利点は、データが取り扱われる地域を明確にしやすく、国外法令、準拠法、裁判管轄などに関する不確実性を抑えやすいことです。

クラウドサービスを選定する際には、データが取り扱われる場所だけでなく、準拠法、国際裁判管轄、国内法以外の法令が適用される可能性も確認する必要があります。

個人情報や取引先情報を扱う企業にとって、保存場所を説明できることは重要な管理要件になると考えます。


フォルダーは「開けない」だけでなく「見せない」

企業内のアクセス権限では、ファイルを開けなくするだけでは不十分な場合があります。

例えば、一般職員の画面に次のようなフォルダー名が表示されていたとします。

  • 役員会議
  • 人事評価
  • 給与
  • 事故報告
  • 苦情対応
  • 退職予定者
  • 事業再編
  • 法務相談

このような状態では、中のファイルを開けなかったとしても、その情報が存在すること自体を知られてしまいます。

コワークストレージでは、ユーザーやグループ単位でフォルダーのアクセス権限を設定できます。

上位フォルダーを「アクセスなし(通過のみ)」とし、実際に使用を許可する下位フォルダーだけへ権限を付与する構成も可能です。

適切に設定すれば、従業員には業務上必要なフォルダーだけを表示し、権限を持たないフォルダーを通常の利用画面へ表示させない構成を作れます。

これは画面を整理するためだけの設定ではありません。

業務上必要のない情報の存在を知らせず、誤操作や不正閲覧の機会を減らすためのアクセス制御です。


最小権限でフォルダーを設計する

情報管理では、「社内の人だからすべて見せてもよい」と考えるべきではありません。

業務に必要な人へ、必要な情報を、必要な期間だけ利用させることが基本です。これを最小権限の原則と呼びます。

例えば、次のように構成します。

全職員

  • 社内規程
  • 各種様式
  • 全体周知
  • 共通マニュアル

総務担当者

  • 人事関連
  • 勤怠関連
  • 雇用契約
  • 職員情報

経理担当者

  • 請求書
  • 支払資料
  • 会計資料
  • 経費精算

役員

  • 経営資料
  • 人事評価
  • 役員会議資料
  • 事業計画

部署別職員

  • 所属部署の業務データ
  • 担当案件
  • 部署内共有資料

個人ごとに権限を設定すると、従業員の増減や異動のたびに変更箇所が増えます。

原則として、組織や職務に対応したグループを作成し、そのグループへ権限を付与します。従業員の異動時には所属グループを変更することで、アクセス範囲を整理しやすくなります。


第2層:端末セキュリティで感染の入口を抑える

クラウドストレージ側にランサムウェア対策があっても、利用するパソコンの管理が不要になるわけではありません。

パソコンがマルウェアに感染すると、ログイン情報の窃取、ファイルの暗号化、不正送信、クラウド上のファイル変更などが行われる可能性があります。

端末側では、最低限次の対策が必要です。

  • WindowsやmacOSを最新の状態に保つ
  • ウイルス対策ソフトまたはEDRを導入する
  • ブラウザや業務アプリケーションを更新する
  • 一般利用者へ管理者権限を常時付与しない
  • 不要なアプリケーションを削除する
  • USBメモリーなどの外部媒体を管理する
  • 端末の画面ロックとディスク暗号化を設定する
  • 退職者や廃棄端末からアカウント情報を削除する

クラウドストレージは、感染した端末から操作される可能性があります。

そのため、データを保管するクラウドと、クラウドへ接続する端末の両方を管理しなければなりません。


第3層:多要素認証でアカウントの乗っ取りを防ぐ

クラウドサービスでは、IDとパスワードがデータへ入るための鍵になります。

複雑なパスワードを設定していても、フィッシング、マルウェア、情報漏えい、使い回しなどによって第三者に知られる可能性があります。

そのため、パスワードだけでログインできる状態にせず、多要素認証を使用します。

コワークストレージでは、SMSや認証アプリを使用した2段階認証が提供されています。回線認証やシングルサインオンなどの機能も案内されています。

多要素認証を設定すれば、パスワードが漏えいした場合でも、それだけではログインできない状態を作れます。

ただし、多要素認証だけではアカウント管理は完成しません。

次の運用も必要です。

  • 従業員ごとに個別アカウントを発行する
  • 共有アカウントを原則として使用しない
  • 退職者のアカウントを速やかに停止する
  • 異動時に所属グループと権限を変更する
  • 管理者アカウントを通常業務に使用しない
  • 管理者を必要最小限の人数に限定する
  • 復旧用の認証手段を安全に管理する
  • ログイン履歴や操作ログを定期的に確認する

操作ログは「事故の後」に役立つ

情報漏えいやデータ消失が疑われたとき、原因を調査するには記録が必要です。

コワークストレージでは、誰が、いつ、どのファイルへアクセスし、どのような操作を行ったかを記録する操作ログが提供されています。

操作ログは、従業員を常時監視するためのものではありません。

  • 誤って削除した利用者を確認する
  • 不審なダウンロードを調査する
  • 情報共有の範囲を確認する
  • 事故の影響範囲を特定する
  • 取引先や顧客へ状況を説明する
  • 権限設定を見直す

といった、事故対応と管理改善に利用するものです。

ログを保存していても、誰も確認しなければ対策として機能しません。

異常発生時に誰がログを確認するか、どのような操作を異常と判断するかを決めておく必要があります。


第4層:コワークストレージとは別のバックアップを持つ

コワークストレージでは、国内の複数データセンターでデータが冗長化され、過去バージョンへの復旧やランサムウェア対策も提供されています。

それでも、企業が管理する重要データを一つのサービスだけに依存させるべきではありません。

考えられるリスクには、次のものがあります。

  • 管理者アカウントが使用できなくなる
  • 誤った権限変更や削除が行われる
  • クラウドサービスに障害が発生する
  • インターネット回線が長時間停止する
  • 契約や支払いに問題が生じる
  • 保存期間を超えて過去データが削除される
  • 契約終了やサービス変更に伴って移行が必要になる

そこで、重要データについては、コワークストレージとは異なる管理系統へ別のコピーを保管します。

必要なフォルダーをコワークストレージから自社の機器へコピーし、利用者側で独立したバックアップを取得する運用も考えられます。

別系統バックアップの例

  • 管理された社内NAS
  • 暗号化した外付けストレージ
  • バックアップ専用の別クラウド
  • 別拠点に設置したバックアップ機器
  • 通常時は接続しない取り外し式媒体

重要なのは、元データと同じアカウント、同じ端末、同じ管理者権限ですべて削除できる状態を避けることです。

ランサムウェア対策では、バックアップを通常のネットワークから隔離し、外部記憶装置を使用する場合は、バックアップ取得時以外は接続を切る方法が有効です。


3-2-1ルールを基準に考える

バックアップの代表的な考え方に、3-2-1ルールがあります。

  • データを合計3つ保持する
  • 2種類の異なる保存方法または媒体を使用する
  • 1つを別の場所へ保管する

コワークストレージを中心とする場合、例えば次の構成が考えられます。

1つ目:コワークストレージ

従業員が日常業務で使用するデータです。

2つ目:管理されたNAS

コワークストレージ上の重要フォルダーを定期的にバックアップします。

3つ目:切り離されたバックアップ

暗号化した外付け媒体や別拠点など、日常業務のアカウントや端末から直接変更されにくい場所へ保管します。

すべてのデータを同じ方式で保存する必要はありません。

失った場合の影響が大きいデータを分類し、優先順位を決めます。

  • 顧客情報
  • 契約書
  • 会計・税務資料
  • 人事・労務資料
  • 事故・苦情等の記録
  • 業務継続に必要な手順書
  • 代替できない写真や制作データ
  • システムの設定情報

重要度の低い一時ファイルまで同じ期間保存すると、容量と管理負担が増えます。

データの価値に応じて、保存頻度と保存期間を決めることが必要です。


同期とバックアップは異なる

クラウドストレージとパソコンを同期している場合、パソコン上で変更した内容がクラウドにも反映されます。

これは業務上便利ですが、必ずしも独立したバックアップにはなりません。

  • パソコンで削除するとクラウドでも削除される
  • 暗号化されたファイルがクラウドへ同期される
  • 誤った上書きが反映される
  • 不正操作が他の端末にも反映される

可能性があるためです。

同期は、複数の場所で同じ最新版を使用するための機能です。

バックアップは、現在とは異なる過去の状態へ戻すための仕組みです。

この違いを理解せず、「クラウドと同期しているからバックアップ済み」と判断するのは危険です。


第5層:実際に復元できるかを確認する

バックアップで最も見落とされるのが、復元確認です。

管理画面に「バックアップ成功」と表示されていても、必要なファイルが含まれているとは限りません。

また、データが残っていても、復元方法を知っている担当者がいなければ、業務再開までに長時間を要します。

そのため、定期的に次の確認を行います。

  1. 対象ファイルがバックアップされているか
  2. 指定した時点のデータを取り出せるか
  3. ファイルが破損せず開けるか
  4. フォルダー構成とアクセス権限を再現できるか
  5. 復元に必要な時間を把握しているか
  6. 担当者が手順どおり操作できるか
  7. 管理者が不在でも復旧できるか

バックアップがあることと、復元できることは別です。

一度も復元したことがないバックアップは、事故時に利用できるか確認できていないバックアップと考えるべきです。


RPOとRTOを決める

バックアップ設計では、次の二つの目標を決めます。

RPO:どの時点まで戻せればよいか

例えば、毎日深夜にバックアップを取得する場合、最大で一日分の作業が失われる可能性があります。

「一日分なら再入力できるのか」「一時間分でも失えないのか」を業務ごとに判断します。

RTO:何時間以内に業務を再開するか

データが復元できても、復旧に三日かかるのであれば、その間は業務が停止します。

  • 一時間以内
  • 当日中
  • 翌営業日まで
  • 数日以内

など、許容できる停止時間を決めます。

すべての業務を即時復旧させる構成は、高額になります。

顧客対応、請求、訪問予定、連絡先など、停止すると影響が大きい業務から優先して復旧できるように設計します。


退職・異動時の処理をルール化する

クラウドストレージでは、アカウント管理がデータ保護に直結します。

退職者のアカウントが残っている、異動前の部署フォルダーへ引き続きアクセスできる、共有リンクが放置されているといった状態は、情報漏えいの原因になります。

退職・異動時には、最低限次の処理が必要です。

  • アカウントの停止
  • 所属グループの変更
  • 管理者権限の解除
  • 共有リンクの確認と無効化
  • 登録端末の解除
  • ログイン状態の解除
  • 所有データの引き継ぎ
  • 多要素認証情報の更新
  • バックアップ対象の確認

人事上の処理とIT上の処理を別々にせず、チェックリストとして連動させることが重要です。


導入するだけでは、企業データは守れない

コワークストレージは、国内保管、複数データセンターへの冗長化、アクセス権限、操作ログ、2段階認証、バージョン管理、ランサムウェア対策などを備えています。

しかし、これらの機能は、適切に設定して運用しなければ十分に機能しません。

  • 全職員へ広い権限を与える
  • 共有アカウントを使用する
  • 多要素認証を設定しない
  • 退職者のアカウントを残す
  • 操作ログを確認しない
  • 重要データを別にバックアップしない
  • 復元テストを行わない

という状態では、製品の機能を十分に活用できていません。

企業データの保全は、製品を契約して終了する作業ではありません。

データ、端末、認証、権限、バックアップ、復旧手順を一つの仕組みとして設計することが必要です。


バックアップは経営判断である

データを失った場合に発生する損害は、ファイルを再作成する時間だけではありません。

  • 業務停止
  • 顧客対応の遅延
  • 取引先への説明
  • 個人情報漏えいへの対応
  • 調査と復旧費用
  • 契約上の責任
  • 信用の低下
  • 売上機会の損失

といった影響が発生します。

一方で、すべてのデータを最高水準で保護すれば、費用や管理負担が過大になります。

そのため、企業が保有する情報を分類し、失った場合の影響に応じて対策を決めます。

  • 何を守るのか
  • 誰が利用するのか
  • 誰には見せないのか
  • 何日前まで戻せるようにするのか
  • 何時間以内に復旧するのか
  • 誰が復旧作業を担当するのか
  • どの程度の費用をかけるのか

バックアップとは、ストレージ容量を購入することではありません。

事業停止のリスクと、対策に必要な費用のバランスを決める経営上の取り組みです。


TrusKiteが考える企業データ保全

TrusKite(トラスカイト)では、コワークストレージを導入するだけで、企業のバックアップが完成するとは考えていません。

次の5層を一体として設計します。

国内クラウド保管
+端末セキュリティ
+多要素認証とアクセス権限
+別系統バックアップ
+定期的な復元テスト

まず、現在どこにデータが保存され、誰がアクセスできる状態になっているかを確認します。

そのうえで、次の内容を企業ごとに整理します。

  • データの移行
  • フォルダー構成
  • アカウントとグループ
  • 部署・役職ごとのアクセス権限
  • 管理者権限
  • 2段階認証
  • 端末セキュリティ
  • 別系統バックアップ
  • 保存世代と保存期間
  • 退職・異動時の処理
  • 操作ログの確認
  • 復旧手順と復元テスト

データをクラウドへ移すことが目的ではありません。

必要な人が安全に利用でき、事故が起きた後も取り戻せる環境をつくることが、企業のバックアップと情報管理における本当の目的です。

TrusKite(トラスカイト)では企業の規模や業種に応じて、最適なプランのご提案が可能です。
ぜひお気軽に問合せフォームからご連絡ください。


※本記事に記載したコワークストレージの機能は、2026年7月時点のNTT東日本の公開情報を基にしています。契約プラン、利用環境、設定およびサービス改定により、利用可能な機能が異なる場合があります。

※国内にデータが保管されることによって、すべての国外法令の適用、情報漏えい、サイバー攻撃、サービス障害またはデータ消失を防止できるものではありません。

※本記事で紹介する構成は、TrusKiteが独自に検討する構成例です。NTT東日本による公式な推奨構成、代理店関係または提携関係を示すものではありません。