中小企業のセキュリティ対策|ルーター・UTM・セキュリティAPによる多層防御

企業のセキュリティは「1台の機器」では守れない
中小企業が整えておきたい3層のネットワーク防御
サイバー攻撃や情報漏えいは、一部の大企業だけが対応すべき問題ではありません。
取引先とのメール、クラウドサービス、ネットバンキング、オンライン会議、従業員のパソコンやスマートフォンなど、企業活動の多くがネットワークを前提としている昨今、情報セキュリティは「IT部門だけの問題」ではなく、事業継続に関わる経営課題です。
一方で、中小企業では専任の情報システム担当者を配置できず、次のような状態になっているケースも少なくありません。
- 通信事業者から渡されたHGWや家庭用ルーターをそのまま使用している
- パソコンにウイルス対策ソフトを入れただけで安心している
- 社員用と来客用のWi-Fiが分離されていない
- 機器の更新状況やセキュリティログを確認していない
- 問題が起きた際の連絡先や初動対応が決まっていない
企業のネットワークを守るためには、特定の製品だけに依存するのではなく、役割の異なる対策を組み合わせる「多層防御」が必要です。
本記事では、中小規模の事業所におけるネットワークセキュリティの基本構成として、次の3つを組み合わせる考え方を紹介します。
- ヤマハ製の企業向けルーター「RTXシリーズ・NVRシリーズ」
- ムラテック製UTM「InformationGuard」
- セキュリティ機能付きアクセスポイント「Anti Spreader Pro」
なぜ、ウイルス対策ソフトだけでは不十分なのか
パソコンに導入するウイルス対策ソフトは重要です。しかし、それだけですべての攻撃を防げるわけではありません。
企業ネットワークでは、次のような経路から問題が発生します。
- 不審なメールの添付ファイル
- フィッシングサイト
- OSやアプリケーションの脆弱性
- 持ち込まれたパソコンやスマートフォン
- 管理が不十分なIoT機器
- 不正なリモートアクセス
- 社内端末間でのマルウェア感染
- 盗まれたIDとパスワードの悪用
一つの対策を突破された場合でも、次の防御層で検知・遮断し、被害を限定できる構成が必要です。
セキュリティの目的は、攻撃を一度も受けないことではありません。
侵入される可能性を下げ、侵入された場合の拡大を防ぎ、業務を早期に復旧できる状態をつくることが重要です。
第1層:ヤマハ製の企業向けルーターで通信基盤を整える
ルーターは、インターネットと社内ネットワークを接続する中核機器です。
企業向けルーターには、単にインターネットへ接続するだけでなく、次のような役割があります。
- 不要な通信を通さないアクセス制御
- 長時間の安定稼働
- 拠点間VPNやリモートアクセスVPN
- 社内ネットワークの分割
- 通信ログの記録
- 接続機器やネットワーク構成の把握
- 通信障害発生時の原因調査
- 安全な遠隔管理
ヤマハのRTXシリーズなどは、VPN、ネットワーク管理、LAN構成の可視化など、企業ネットワークの構築・運用に必要な機能を備えています。機種によって処理性能、VPN接続数、ポート構成などが異なるため、従業員数や通信量、拠点数に応じた選定が必要です。
ここで重要なのは、企業向けルーターを購入すること自体ではありません。
不要な管理画面を外部へ公開しない、使用していない通信を許可しない、ファームウェアを更新する、管理者パスワードを適切に管理するといった設計と運用が必要です。
来客用Wi-Fi、業務用パソコン、複合機、監視カメラ、IoT機器などを同一ネットワークへ無条件に接続せず、用途に応じてネットワークを分離することも有効です。
第2層:InformationGuardでネットワークの出入口を検査する
ルーターが通信経路を制御する機器であるのに対し、UTMは通信内容や通信先を検査し、さまざまな脅威をまとめて管理するための機器です。
UTMとは「Unified Threat Management」の略で、日本語では「統合脅威管理」と呼ばれます。
アンチウイルス、アンチスパム、Webフィルタリング、IPS、アンチボットなどの機能を通じて、ウイルス、不正なWebサイト、不正侵入、外部の攻撃者サーバーとの通信などを検知・遮断する構成となっています。
ルーターだけでは判別が難しい不審な通信をUTMで検査することで、インターネットと社内ネットワークの間に、もう一つの防御層を設けられます。
また、セキュリティ機器は「設置されていること」よりも「実際に何を検知したか」が重要です。
InformationGuardには、UTMによる防御状況をレポートする機能もあります。定期的にレポートを確認することで、攻撃の有無や感染が疑われる端末を把握しやすくなります。
第3層:Anti Spreader Proで社内の感染拡大を抑える
UTMは主にネットワークの出入口を守ります。
しかし、すでに感染している端末が社内へ持ち込まれた場合や、USBメモリー、VPN、クラウドサービスなどを経由して端末が感染した場合、インターネットの出入口だけを監視していても、社内端末間の感染拡大を防げないことがあります。
そこで重要になるのが、内部ネットワークにおける「横方向の通信」への対策です。
Anti Spreader Proは、振る舞い検知によって、ワームやマルウェアが他の端末を探索したり、不審な通信を大量に発生させたりする挙動を検知し、社内ネットワークでの二次感染を抑えることを目的とした製品です。
アクセスポイント型では、無線LANへ接続する端末の通信を監視し、有害なトラフィックや感染拡大につながる通信の遮断を行います。ARPスプーフィング、DoS攻撃、DHCPフラッディングなどへの対策機能も案内されています。
特に、次のような環境では有効性が期待できます。
- 社員がノートパソコンを持ち歩く
- 業務用スマートフォンやタブレットが多い
- 私物端末の接続を完全には禁止できない
- 来客用Wi-Fiを提供している
- 複合機、カメラ、IoT機器などが接続されている
- 無線LANを介した端末間の感染拡大が心配
ただし、Anti Spreader Proも、パソコンに導入するウイルス対策ソフトやEDRの代わりにはなりません。
ネットワーク上の不審な挙動を検知する対策と、端末内部のファイル、プロセス、操作を監視する対策は、役割が異なります。
3製品を組み合わせる意味
この3製品は、同じ機能を重複して導入するものではありません。
それぞれの役割を整理すると、次のようになります。
防御層 | 主な役割 |
|---|---|
ヤマハ製ルーター | 通信経路、VPN、アクセス制御、ネットワーク分割 |
InformationGuard | インターネットとの出入口における脅威検査 |
Anti Spreader Pro | 社内ネットワーク内における感染拡大の抑止 |
つまり、
通信を適切に制御し、外部との通信を検査し、内部での拡散を抑える
という3段階の防御を構成できます。
この組み合わせを企業向けネットワークの標準構成として整備しておけば、拠点ごとに異なる機器や設定が乱立する状態を避けやすくなります。
障害発生時の調査、機器交換、設定変更、ログ確認などの手順も標準化しやすくなり、日常的な運用負担の軽減につながります。
ただし、実際の接続構成は、インターネット回線、固定IPアドレス、ひかり電話、VPN、既存ネットワーク、UTMの動作方式などによって変わります。
単純に機器を直列に接続すると、二重ルーターや二重NATが発生し、VPN、Web会議、クラウドサービスなどに不具合が生じる場合があります。導入時には、各機器の役割と責任範囲を明確にした設計が必要です。
機器を導入しただけで安全になるわけではない
セキュリティ機器は重要ですが、機器だけですべてのリスクを解消することはできません。
最低限、次の対策を並行して実施する必要があります。
1.OSとソフトウェアを更新する
Windows、macOS、スマートフォン、ブラウザ、Office、PDF閲覧ソフト、ルーター、複合機などを定期的に更新します。
2.端末ごとのセキュリティ対策を行う
ウイルス対策ソフトやEDR、MDMなどを導入し、警告が発生していないか確認します。
3.多要素認証を使用する
Microsoft 365、Google Workspace、クラウドストレージ、リモートアクセスなどには、多要素認証を設定します。
4.権限を必要最小限にする
従業員全員へ管理者権限を与えず、共有フォルダやクラウドサービスへのアクセス権限を業務上必要な範囲に限定します。
5.独立したバックアップを確保する
バックアップ先を常時接続したままにせず、クラウド、別拠点、取り外し可能な媒体など、障害や攻撃の影響を同時に受けにくい場所へ保存します。
6.ログとレポートを確認する
セキュリティ機器から通知が届く状態を整え、検知履歴を定期的に確認します。
7.事故発生時の初動を決めておく
感染が疑われる端末をネットワークから切り離す、関係者へ連絡する、ログを保存するなど、最初に行う対応を決めておきます。
8.従業員教育を継続する
フィッシングメール、不審な添付ファイル、パスワードの使い回し、私物USBメモリーなど、日常業務で発生しやすいリスクを定期的に共有します。
セキュリティ対策は「製品」ではなく「仕組み」で考える
ヤマハ製ルーター、InformationGuard、Anti Spreader Proを組み合わせることで、中小規模の企業でも、ネットワークにおける多層防御の基盤を比較的分かりやすく構築できます。
しかし、この構成は完成形ではありません。
企業ごとに、従業員数、業務内容、保有する情報、クラウドサービス、拠点数、テレワークの有無、許容できる停止時間が異なります。
重要なのは、高価な機器を導入することではなく、自社のリスクに合った対策を選び、正しく設定し、継続して管理することです。
セキュリティ対策を「何か問題が起きた後に行う費用」と考えるのではなく、顧客、従業員、取引先、そして事業そのものを守るための基盤として整備する必要があります。
当事業では、現在のネットワーク構成や使用機器を確認したうえで、必要な対策と不要な投資を整理し、企業規模に応じたネットワーク構成をご提案しています。
セキュリティ機器の導入だけでなく、設定、ネットワーク分離、バックアップ、アカウント管理、導入後の運用まで含めて検討することが、継続的な安全につながります。
TrusKite(トラスカイト)では企業の規模や業種に応じて、最適な機器やプランのご提案が可能です。
ぜひお気軽に問合せフォームからご連絡ください。